数種類所蔵されている江戸切絵図を順に古典籍資料室で見せてもらってるている際、何番目かに袱紗に包まれて運ばれてきたこの28図を一図一図広げた時、全図の保存状態の良さにびっくりしました。元題箋が残り、紙焼け、虫喰い、破れが無く、文字の彫りも鋭く残り、退色も少なく、当時の江戸人（えどびと）が手にしていた江戸切絵図が目の前に現れた感がありました。

尾張屋は、最初の江戸切絵図を板行した嘉永2年（1849）から安政4年までの8年間に28図の切絵図を出し、この年に21図を一挙に改正再板して全26図（or28図？）のセット販売をしたようです。しかし、冑山文庫蔵の28図はこの再板絵図ではなく、すべて初板の板行年の入った絵図で揃っていました。板行年表参照　

この江戸切絵図をいつか復刻したいと決意し、国会図書館への撮影、復刻許可申請をする一方、冑山文庫に入っていなかった安政5年以降に板行された4図も下記所蔵元のご協力を得て、平成7年（1995）夏に全32図の撮影を完了しました。

江戸切絵図26　小石川絵図（嘉永７年　新刻）　　　　　　　　東京都立中央図書館蔵
江戸切絵図29　京橋南築地絵図（文久元年　再刻）　　　　　　東京都立中央図書館蔵
江戸切絵図31　八町堀細見絵図（文久2年　新鐫）　　　　　　東京都公文書館蔵
江戸切絵図32　霊岸嶋八町堀日本橋南絵図（文久3年　再刻）　個人蔵

復刻版の仕上りの形は“江戸人が手にした江戸切絵図”にこだわり、同じサイズに印刷し、同じ折り方をして表紙を付け、題箋を貼り、和紙封筒に入れました。

絵図のサイズは5種類ありました。それを全32図同じサイズに折りたたむ折り方と、表紙を貼る位置も5通りあることが確認できました。「江戸切絵図の形とサイズ」参照

復刻版に使う用紙は、和紙の風合いを持ち、印刷復元効果に優れ、折りに耐えるパルプ含有量の多い洋紙を求め、試し刷りと折りを重ねた結果、アラベール・ナチュラル（菊48.5kg）に決めました。

復刻版の表紙は、原本の深川鼠色1色に代わり、色違いの揉紙（もみがみ）和紙にしました。

絵図番号の1～10番までを10色に色分けして32番まで繰り返し、彩色絵地図に相応しい華やかな外観にしました。

右図が表紙です。上段1～10番、中段11～20番、下段21～30番を並べ、31、32ははずしてあります。

各絵図の1～32の番号は板行年順に弊社で付けた便宜上の番号です。

次に“索引”の作成です。復刻した切絵図が単に観賞用だけでなく、幕末の江戸地図として永く使われるためには完全な索引が必要と考え、地名・寺社名・人名の完全索引を各絵図裏面に付けました。ほかの仕事をしながら、何度かの中断もして、全図の索引拾いに8年もかかってしまいました。

資金面の都合もあって隔月2図ずつの発行とし、その度所蔵元へ有料頒布許可申請することとして

江戸時代の絵図は絵図名、板元名の墨摺りに大きな龍紋丸朱印を押印したハチマキ包装をして販売されていたようですが、代わりに絵図名を印刷した大礼和紙封筒を付けました。

全図完成後、全32図の索引をまとめた「江戸切絵図　総索引」を別冊で作成し、幕末期の江戸全域の地名/寺社名/人名総索引として使えるようにしました。総索引は全32図ご購入に付録でお付けしました。

復刻版を発行して数年後、国会図書館蔵「冑山文庫　江戸切絵図　28図」は、幕末～明治に生きた根岸信輔（友山）（ゆうざん　文化6～明治23）という人物の蔵書の一つだったことが判明しました。根岸信輔ならびに冑山文庫についての詳細は“原図の所有者”　をご覧ください。

収納ケースを4種用意しました。お好きなのをお選びください。収納ケース→

※「国会図書館所蔵　冑山文庫　江戸切絵図」については、PC「国会図書館　江戸切絵図」で検索して、
「国会図書館デジタルコレクション　江戸切絵図」でご覧になれます。

町街の賑わい　路地裏のざわめき　江戸人（びと）の生活の匂いを想い浮かべながら

江戸切絵図の

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